疾きこと夢のごとし 歌詞欄(Lyrics)「遊びたい、のに いまはまだ」 鈍色の空、廊下を辿る 心の滑走路にはまだ火がつかぬ 少女は、昼を粛々と流し 平らなる時を、噛まずに呑み込む 教科書の頁は風に踊り 黒板の数字はただの呪文 走りたき野原など、此処には無く 鉄の箱の世界こそ、吾が舞台 呪いの如く繰り返す授業 「わからぬことばかり」それは本当 けれど指先、命宿し 彼の操縦桿を握れば別人 休み時間が鐘を打てば 脳裏には、あのカーブ、あの直線 まだかまだか、と宵を待つ 陽が墜ちるのを、ただ願い 錆びついた通学路を越え 心は既にエンジン音 燃えよ、虚構のハイウェイにて 真昼の劣等 捨て去って スーパーカーで満たす賛歌 負け の二字など知らぬ速さ! 誰よりも、峠を刺す 日常など、ミラーの彼方 世界は、我が掌 光と音を引き裂きて、いざ——! ピポ ピポ ピポ…… 奇なる警報 幻の合図 回転数は赤を超え 脳裏の霧が晴れる 「お前では無理」と誰かが言う されど我、名も無き道の王 宿題など知らぬ存ぜぬ 通知表?それは『未踏領域』 運動嫌いと笑うけれど この私は、“指先で”飛ぶ 幾千の挑戦者を薙ぎ払い 孤高なるタイムを刻む 画面の彼方にこそ、真の私 煌めく夢、ピクセルの王冠 真実など、どちらでもよい 「これは ただの遊び」 それでも 怖れてなどおらぬ 此処が、私の戦場 萌芽の鼓動は、音符と共鳴し 鼓膜に刻むは、雷鳴の滑走——! 燃えあがれ、記憶のレースライン 過去も未来も置き去りに スーパーカーで描く詩は 誰も知らぬ、少女の戦記 影より速く、時より早く この世界を、裏から抜ける ステージの終には何がある? 構わぬ、今この瞬間だけあれば—— 「ぶいぃぃぃ——ん!」 「アクセル全開っ!」 「インド人を右へ!」 「また勝っちゃったぁ♡」 宵満ちて また一日が夢へと堕ちる頃 窓の向こうじゃ蝉が啼く 「夏休み?そんなもの…関係ない」 私は走り続けよう 誰も踏み入れぬその最速へ ——静かなる、少女の疾走 |