『黄泉語』- 伊邪那美と伊邪那岐 - 歌詞欄(Lyrics)◆ 第一幕:序 しづかなる 常世の淵に 影ひとつ 光も届かぬ 黄泉の門よ 伊邪那美命 命つきて 火の神産みし 痛みに果てぬ 君が手をとり 命を紡ぎ 八百万の神 生まれし時 ──けふもまた 想ひは沈む まほらの世に 残した吾子(あこ)よ ◆ 第二幕:破 君よ なにゆえに 還りしや 約は果たさず 扉をあけて 見られし我が身の 穢れなる姿 骨と肉とが 交わらぬ骸 なおも言の葉を かける伊邪那岐よ 『見てはならぬ』 その言葉さへも ──信じた その日 あはれに崩れ 黄泉の王座に 座すこととなる ◆ 第三幕:急 黄泉津比良坂 千人送らん 君が世に戻らば 我は呪わん 日毎に千を死に 君は千五百を産むがよい 穢れは連なり 呪いは連鎖す 伊邪那岐よ 禊を行えど 我が存在は消えぬ 神の理を 破りし罪 ──我こそは 死を司るもの 黄泉の主と成り果てし ◆ 終幕:静寂 時は巡りて 神は神ならず 信仰こそが 形を成せり 今も黄泉より 眼(まなこ)を光らせ 生の世を 静かに見下ろす 伊邪那美命 その名を呼べば 風が止み 影が震え ──死は終わりにあらず 哀しみとともに 輪は巡る 【了】 |