ゆめのはざま、かげのさき 歌詞欄(Lyrics)あやふやな月が うつしよを照らす わたしとあなたのあわいで 影が目を覚ました だれが我(わ)を我と呼びし日か 骨の奥にひそむ記憶も 母の胎よりしたたりおちた わたしは“なに”? 目のしずくは水面をゆらす 檻か、靴か、繭か、罪か 二元(ふたつ)の檻に ゆらゆらと 性(さが)の名を与えて 拘(つな)がれて 鏡のなか、わたしはわたしを問う 「あなたは女?」 いいえ、「ただの私」 ゆらめく認知に まことなどなく ただ、こゝにある わたしだけ ひかりと影の、ゆきかう道に 羽のある指が、触れては消える 名もなき名を持ちしわれら 夜に問う、「これが恋か、それとも光か」 名札ではくくれぬ我らの恋 男と女 そのあわいに咲いた 無明(むみょう)の花は、夜露に濡れて 「同じ性」と云うことば まるで鋳型(いがた)のように 誰かの掟で括られてきたが まことに恋は、ただ触れたくなるもの 誰が知ろう、こころがいかに疼くか 哲には性差 理には区別 されど、風がわたしに告げた 「性は流れ、形はしばしにすぎぬ」 あなたがわたしに手を伸ばすなら それは“真理”ではなく“願い”か ゆらゆら、うねる わたしの意識 肉の声に、こころが応える 過去の禁忌が ほどけてゆくのを あなたのまなざしが 静かに見ていた からみゆく、繻子のような肌 指のあしらいに言葉を忘れ 「いけません」と笑うあなたに わたしはただ、夜を差し出す うねる吐息が 感情を濡らす 乳白の夢に溺れて その奥にあるわたしの泉 あなたは、最後までお読みになった それでも 朝はくるの わたしを名づける者は もういない 心の輪郭はぼやけても あなたとわたしの記憶だけは くっきりと ひかりと影の、ゆきかう道に 羽のある指が、触れては消える もう意味は要らない ただ、あなたと交わした夜が すべて わたしがわたしを忘れるとき あなたが わたしを思い出して それがこのうたの終わりなら なんと美しいことか |