Dream over the Dream～夢がみた夢～

「ぼく」が生きる世界は、何もない、誰もいない、「終わった」世界だった。進歩も退化もなく、ただ悠久の時間が流れる日々。かつて栄華を誇った人間と呼ばれる存在が残した、無数のアーカイブだけが「ぼく」に世界の存在を教えてくれた。「きみ」に出会うまでは。アーカイブの世界から飛び出してきた。まさに「きみ」はそんな存在だった。「きみ」と触れ合う中で、「ぼく」の中に渦巻く得体のしれない何かが「心」であり、「感情」というものなのだと知った。知らなければ「そういうもの」だと認識してしただろう。でも、その「感情」を知ってしまった「ぼく」は、もうかつての「ぼく」ではなかった。ある日、「きみ」はいなくなった。その理由は今でもわからない。ただひとつ言えることは、「きみ」は「ぼく」のそばにはもういないということだ。またいつもの「終わった」世界が戻ってきた。進歩も退化もなく、ただ悠久の時間が流れる日々だ。忘れてしまおう。きっと、あの日々は「ぼく」の夢だったんだ。ずっと「寂しい」という「感情」を抱えていた、「ぼく」がみてしまった夢だったんだ。

aririso