「侵食ロマンス」 歌詞欄(Lyrics)鏡のなかで 君が笑った それだけで 僕の存在理由が ひとつ消えた 「似てきたね」って 言われるたびに 僕の輪郭は 君の影で じわりと溶けていった ねぇ 見てる? 僕のこと この目も この声も けつりゅうさえも 気づけば 君の仕様に 上書きされてた 僕が僕で 君が君で いられない夜が ふつうになっていく 「好き」って 一文字が 侵食していく脳 痛みさえ 君の証明みたいで もう僕は 僕じゃなくてよかった だって それが君なら それでよかった 冷たい床に 寝転がったまま 君の残像が まぶたの裏に張りついてる 爪の先まで 癖が染みこんで 「好き」の定義が 喉をふさぎ 僕の呼吸を 秒単位で止めていく ねぇ 君は どうして笑ってたの? あの日の僕は 呼吸さえ疑ってた ただ隣にいる―― それだけが こんなにも 不条理に思えたんだよ 僕が君で 君が僕で 入れ替わるたびに 境界がにじんでく 「刺激して」「壊して」 悲鳴と快楽のあいだで 君を願った それがたぶん “愛”だった どうして 僕のなかに 君の笑い声だけが 響きつづけてるの 壊れかけた自我がまだ 君の指先を 祈るみたいに 欲しがってる 僕が君で 君が僕で なにもかもが とけて まざって 「好き」って言葉の 輪郭が消えて 最後に残ったのは 心臓の震えだけだった 君が僕を 殺していくみたいで ……それでも 笑ってしまった 君がいなくなった朝の空気が やけに澄んでて やけにうるさくて 僕はまだ 君の中にいた 僕のくせして |