「しろく、うすく、わたし」 歌詞欄(Lyrics)🔗 小説はこちらから読む: 📖『しろく、うすく、わたし。』▶︎ https://note.com/yuharis/n/n3b85675ab5cb わたしは わたしで いようとした。 あなたを壊した夜も、 まぶたを閉じて 眠ることができた。 しろく、うすく、 あなたが にじんで消えるまで。 「似てきたね」って言われるたびに、 あなたの目が 少しずつ曇っていくのがわかった。 でも 言わなかった。 その曇りが いちばん綺麗だと 思ってたんだ。 黙って差し出された手、 握り返すより先に 体温を測ってしまった。 “だいじょうぶ”の演技なら 板についてたのに、 「好き」だけは まだ 下手なままだった。 あなたを 愛したのは事実。 でも 守ろうとはしなかった。 わたしが差し出したやさしさは、 きっと 刃みたいに あなたを削った。 だから いま、 わたしの部屋には 音がしない。 朝の光が 眩しくない日が来て、 やっと あなたの名前を忘れかけた。 でも 街角の香水が ふいに刺さって、 反射みたいに 名前が 喉まで戻ってきた。 笑った顔も 声も 癖も、 ひとつずつ 脱がせるように、 感情を できるだけ薄めて、 誰の輪郭にも 溶け込まないように。 しろく、しろく。 わたしは 色を脱いでいく。 二度と 誰かのなかで、 生きたふりを しないために。 やさしさのふりを しないために。 もし どこかで会えたなら、 そのときは ただの他人として。 知らないふりして すれ違ってね。 わたしの名前を、心の中でも 呼ばないで。 わたしは もう、 あなたのなかでは いないほうが きれいでしょ? わたしのくせに、 あなたを 愛してしまっただけ。 「ごめんね」なんて 言えるわけがなかったから。 その代わりに、 “わたし”を ひとつ 脱ぎ捨てただけ。 しろく、うすく。 それが 全部だった。 |